2017年07月24日

忖度という罠

「忖度(そんたく)」という言葉に注目が集まりました。辞書的には「他人の心をおしはかる」という意味ですが、特に最近は部下が上司の意向を推し量るというようなニュアンスで使われることが多いようです。

私たちの身近にも見られるのではないでしょうか。あからさまには自分の思いを明言せず、しかし関係性や影響力を用いて自分の希望していることを察するように促し人を誘導する手法。そうすることで自分は矢面に立たずに済み、問題が生じた時に責任を負う必要がない。「私はそんなことを言ってはいない。あの人が勝手にしたことでは無いか」と言い逃れるのです。

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 娘の運動会、ハチマキを締めなおす真剣な姿を友達に激写されてしまいました...

こういうことは様々な依存関係の中で頻繁にみられるものです。
例えば親子の関係の中で考えてみましょう。目に見えて虐待と言えるような出来事は起こっていないけれども、精神的・心理的に子どもを抑圧している親。あからさまに子どもに対して「こうしなさい」とは言いません。しかし子どもは親がどのような価値観を持っているか、それまでの関係性の中で叩き込まれていて、実際には親が望んでいる選択以外できないのです。けれども親は自分の意思を明言しません。あたかも子どもが自分で選択したかのように演出します。いつの間にか子どもも、自分が親の意思に誘導されていることが分からなくなり、自分の意志による選択であるかのように錯覚します。
そのようにして、親子双方が「子どもは自分の意思で選択しているのであって、親の強制など無い」と思い込みます。しかしそれは偽りです。
子どもがもし親の暗黙の意思に逆らうならば、親はあからさまにそのことを批判はしないかもしれません。しかし、顔色や態度・言動を通して暗に子どもにプレッシャーをかけるのです。そうやって、子どもの選択を暗に批判します。子どもは親無しに生きることができません。結局、従うしか選択肢は無いのです。
傍目には親が自分の意思を子どもに強制した証拠は何もありません。ただ、親子の関係性の中では明らかに親の子どもに対する強制は実態を持って存在しています。

こういうことが社会の様々な場面で見られます。何がしかの力を持っている人に繋がることで得られる恩恵の見返りとして、暗黙の了解が強制される、そういう共依存的な関係性。
もしそこで矛盾や過ちを指摘する人がいるならば、上に立つ人からも従属している人からも声を合わせて「そんなことは言っていない。そんな事実はない」と否定し攻撃を受けるでしょう。たいていそうなった場合、暗黙の了解の中で作られた偽りの世界の方が真実よりも遥かに強いものです。「暗黙の了解」において守られてきた世界の中に、絶対失うわけにはいかない何がしかが存在しているからです。

組織の中で、コミュニティーの中で、家庭の中で、もちろん教会においても、「王様は裸だ」と言える勇気を持つことは大切です。そして、その役割を誰か個人に求めるべきではありません。一人一人が「王様は裸だ」と言える誠実さを持つことと共に、誰でも「王様は裸だ」と言える風通しの良さ、寛容さを全体で死守していく意識が必要です。

このような歪んだ関係性に陥らないために意識すべきキーワードは「依存」です。上記した親子の例を考えると、子どもが親の不条理に従うのは生きていくためでした。生きるために子どもは親に従わざるを得ません。ですから、子どもは一方的な犠牲者です。
しかし大人の関係性においては違います。失いたくないなにか、どうしても手に入れたいなにか。それは人との繋がりであったり、仕事やポストであったり、名誉であったり、楽しみであったり、安心であったり、色々ですが、そういう自分の欲求を守るために、その代価として暗黙の了解・忖度の世界に陥ってしまうのです。

旧約聖書の偉人ヨブが言いました。「主は与え、主はとられる。主の御名は誉むべきかな」、与えられた物に感謝しつつ、しかし失うことを恐れない心。神様が与え、神様が取られるのであれば、神様がとられ、神様が与えてくださるのです。
何かを得るために、何かを失わないために、真実をゆがめることは止めましょう。失うことを恐れずに「王様は裸です」と言える姿勢、そしてそういう都合の悪い真実を受け止めていく柔らかな心を養っていきたいものです。何かを守るために暗黙の了解という悪魔の策略に心を売り渡し、素晴らしい人生を台無しにしてしまうことがありませんように。

あなたのたった一度の人生を応援している川奈聖書教会 牧師の山口です。

posted by pastoryama at 11:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 人間関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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